より効果的な筋トレを実現するためには食事も重要ですよね。
トレーニング後は使われた筋肉の細胞が損傷した状態になっています。また、血中糖度や血中アミノ酸が低下し、多くの栄養素が汗と共に体外へ排出されてしまいます。
さらに、身体を疲弊したままの状態にすると倦怠感や睡眠障害、集中力の欠如、安静時の心拍数や血圧の上昇、筋肉の痙攣などを引き起こしやすくなるため、トレーニングによって不足した栄養素をしっかりと補いましょう。
そこで、運動やトレーニング前後に積極的に摂取したい栄養素や食材、効果的な食事のタイミングについて管理栄養士がご紹介します。
是非、筋トレの成果を高めるために参考にしてくださいね。
目次
1.筋トレを効果的にするために摂りたい栄養素
筋肉量を増加させるためには、筋肉の材料や合成するために必要な栄養素を摂ることが重要です。
そこで、特に意識して摂取したい栄養素を4つご紹介します。
①たんぱく質
筋トレの効果を高めるために欠かせない栄養素。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、たんぱく質の1日あたりの推奨量は、18~64歳の男性は65g、65歳以上の男性は60g、18歳以上の女性は50gとなっています。
しかし、この量は健康を維持するための推奨量であるため、日常的に運動をしていて筋肉をつけたい方は更に多くの量が必要となります。
日本スポーツ協会の「アスリートの食事摂取基準」によると、目安として1日あたり『体重×1.7~1.8g』のたんぱく質量を推奨としています。
ただ、過剰摂取はカロリーオーバーを招きやすくなるため、特にコレステロールが多く含まれている肉類や魚類、卵などの動物性食品の摂取量に注意しましょう。
その他にも、肥満や老化の促進、便秘、糖尿病、腎機能の低下などの要因となる恐れもあるため、ダイエット中の方は特に過剰摂取にならないように心掛けましょう。
一度にたんぱく質を摂取してしまうと、消化しきれず腸内環境が乱れる要因になることもあるため、毎食できるだけ一定量のたんぱく質を摂ると良いですね。
たんぱく質はビタミンB6と一緒に摂取することで、たんぱく質の分解や合成を促します。このことから、マグロやカツオ等の赤身魚、レバーや鶏肉などの肉類、大豆製品、にんにくや玉ねぎ等のユリ科野菜、ゴマ、玄米、バナナ等のビタミンB6が豊富に含まれる食材を組み合わせることにより、たんぱく質の吸収率を高めることが期待できますよ。
②糖質
筋肉の成長に不可欠な糖質。
糖質が不足している状態でたんぱく質を摂取しても、筋肉の修復や筋肥大の材料となるたんぱく質の役割が果たせません。さらに、極端な糖質制限を行うと体内のたんぱく質を分解してエネルギーに変換し、筋肉が分解されて筋肉量が減少してしまいます。
一方、過剰に摂取するとエネルギーとして使われなかった糖質が脂肪となって身体に蓄積されてしまうため、糖質とたんぱく質をバランスよく摂取することで筋肉量の増加につながります。
日本スポーツ協会の「アスリートの食事摂取基準」によると、中~高強度でトレーニングを行った場合の目安として『体重×7~10g』の糖質を1日あたりの推奨量としています。
糖質を摂取することで血糖値の上昇を促し、グリコーゲンを迅速に再補充するためには理想的な栄養素であると言えます。
③BCAA
筋肉のエネルギー源となる必須アミノ酸のBCAA。
BCAA(ロイシン・イソロイシン・バリン)は筋たんぱく質分解の抑制や筋肉の増強、体脂肪燃焼の促進など運動効率の向上に役立ちます。
筋肉は血中アミノ酸濃度が高くなると合成されやすくなり、低くなると分解されやすくなります。特にトレーニング中は筋肉の合成や分解が活発になるため、血中アミノ酸濃度を高めておくと筋肉の合成がされやすくなります。
BCAAは吸収スピードが速いため、運動前や運動中など頻繁に摂取すると筋肉の損傷軽減、たんぱく質の分解抑制などに効果的です。一方、プロテインは吸収スピードが遅いため、運動後や就寝前などに摂取すると筋肉の増強や回復に役立ちます。
このようにBCAAとプロテインの各々の特性を活かし、上手く組合せることでトレーニングの効果を最大限に引き出すことができます。
④ビタミンD
筋肉増強に役立つビタミンD。
ビタミンDを摂取することによって筋量の維持や増加、損傷した筋肉の修復などにも期待することができます。
油に溶ける特性をもつビタミンDは、オリーブ油やこめ油などの抗酸化作用をもつ油と一緒に摂取することで体内へ効率的に吸収することができます。
そこで、調理する際は油炒めや揚げ物など、油を用いた調理法がおすすめですよ。
2.筋トレに役立つ食材
筋トレの成果を高めるため、栄養素を効率よく摂れる食材にはどのようなものがあるのでしょうか。
そこで、効果的な食材を4つの栄養素別にご紹介します。
①たんぱく質を豊富に含む食材
たんぱく質が豊富な食材は、鶏ささみ肉、鶏むね肉、豚ヒレ肉、豚もも肉、牛もも肉、鶏レバー、マグロ、カツオ、鮭、ブリ、しらす、鶏卵、うずら卵、納豆、枝豆、豆腐、きな粉、チーズ、ヨーグルト、牛乳などです。
主に肉類や魚介類、卵類、大豆製品、乳製品などにたんぱく質が多く含まれています。
また、たんぱく質を摂る際には単一の食材に偏るのではなく、複数の食材を組み合わせて摂るとより効果的ですよ。
②糖質を豊富に含む食材
食後血糖値の上昇を示す指標であるGI値(Glycemic Index)が高いと血糖値を急激に上昇させ、グリコーゲンを迅速に再補充します。
よって精白米や餅、うどん、素麺、フランスパン、食パン、じゃがいも、山芋、里芋、にんじん、とうもろこし、かぼちゃ、すいか、パイナップルなどのGI値が高い食材を摂取すると効果が期待できます。
食事を摂る時間がない場合、糖質を含むスポーツドリンクやゼリー飲料などを活用しても良いですね。
バナナの糖質は100gあたり21.1gと豊富に含んでいますが、GI値は51程度であることから前述した食材と比較するとGI値に関しては低い食材であると言えます。
そこで、トレーニング前に食事を摂る場合は消化不良を防ぐため、精白米(おにぎり)やうどん等、消化の良い炭水化物を摂るようにしましょう。
一方、脂質を多く含むパスタやラーメン、揚げパンやデニッシュ等のパンは消化に時間を要するので控えた方が良いですね。
③BCAAを豊富に含む食材
BCAA が豊富に含まれる食材はマグロ、カツオ、アジ、サンマ、鶏ささみ肉、鶏むね肉、鶏もも肉、豚ロース肉、豚もも肉、牛ヒレ肉、卵、大豆、納豆、きな粉、油揚げ、高野豆腐、木綿豆腐、牛乳、チーズなどです。
主に魚介類や肉類、卵類、大豆製品、乳製品などにBCAAが多く含まれています。
近年ではスーパーやコンビニなどでBCAAを多く含むサラダチキンや牛乳、茹で卵、豆乳、チーズなどの手軽に摂れる食品が販売されているため、上手く利用して日常的な摂取継続を目指しましょう。
④ビタミンDを豊富に含む食材
ビタミンDを豊富に含む食材はカツオ、しらす、鮭、イワシ、ウナギ、サンマ、アジ、干し椎茸、舞茸などです。
野菜類にはビタミンDは含まれていない栄養素であるため、主な摂取源である魚類、その他にはきのこ類などから意識して摂るようにしましょう。
ただ、食事だけで1日に必要なビタミンDの量を全て補うことは難しく、適度な日光浴によって皮膚でのビタミンDの産生を促すことも必要です。紫外線対策は皮膚でのビタミンDの生成を妨げる要因になるため、過度な紫外線対策には注意して日光浴を行いましょう。
3.効果的な食事のタイミング
筋トレは食事を摂るタイミングによって効果が異なります。
そこで、筋トレ前と筋トレ後の食事は各々どのような影響を与えるのかを解説します。
筋トレ前の食事による影響
筋トレ前の食事は、トレーニングを行う際のエネルギー源になります。
空腹の状態でトレーニングを行うとエネルギーが不足し、筋肉のたんぱく質を分解してエネルギーを作りださなくてはなりません。これでは筋肉量が減少してしまって逆効果です。さらに、空腹状態ではトレーニング時に低血糖状態になり、頭痛や吐き気、めまい等の症状を引き起こす恐れもあります。
食後は体内で消化や吸収が行われるため副交感神経が優位となり、時間が経つにつれて交感神経が活発的になります。そのため、トレーニングの2~3時間前を目安に食事を摂ると良いでしょう。
前述したとおり、筋肉の増強に役立つBCAAや高GI値の食材をトレーニング前に摂取するとより効果的ですよ。
筋トレ後の食事による影響
筋トレ直後から筋たんぱく質の合成作用が高まるため、トレーニング後にたんぱく質を摂取することで筋肉量の増加が期待できます。
また、トレーニング後に摂取する糖質は脂肪細胞ではなく、筋肉に蓄えようとします。よって、たんぱく質に加えて糖質を一緒に摂ることで、筋肉の成長が促進されます。
特に、筋トレ後1~2時間は筋たんぱく質の合成作用が最も高い時間帯です。筋トレ直後~30分の間は成長ホルモンの分泌が盛んになり、筋肉の修復が行われます。そのため、筋トレ直後は30分以内にたんぱく質を摂取するように努めましょう。
注意したい点として、トレーニング後に何も食べないという行動は避けましょう。エネルギーを消費したトレーニング後は、何も食べない方が当然体重は落ちます。しかし、筋肉量も低下してしまい、結果的に基礎代謝の低下やリバウンドを引き起こすリスクも高くなってしまいますよ。
筋トレ後には是非、たんぱく質を豊富に含む食材と合わせて糖質を摂りましょう。
ただ、栄養バランスを考慮した食事を日常的に作るのは容易ではありませんよね。そこで、トレーニング中の食事管理に特化し、管理栄養士が監修する宅配弁当を活用するのも良いでしょう。
4.まとめ
以上、筋トレ前後に積極的に摂取したい栄養素や食材、効果的な食事のタイミングについて解説しました。
より効果的な筋トレを実現するため、以下の点に注意しましょう。
⑴ たんぱく質を含む食材はビタミンB6が豊富な食材を組み合わせる
⑵ BCAAは運動前や運動中に頻繁に摂取する
⑶ ビタミンDは抗酸化作用をもつ油と一緒に摂取する
⑷ トレーニングの2~3時間前を目安にBCAAや高GI値の食材を摂る
⑸ トレーニング後にはたんぱく質を豊富に含む食材と糖質を摂る
筋トレの正しい知識を踏まえ、健康的な身体づくりを目指しましょう。
是非、調理方法の工夫も取り入れて日頃の食生活にお役立てくださいね。
当記事が参考となり、1人でも多くの方の健康増進に携われたら幸いです♪
《参考文献》
⑴ 戸塚雄弐 , オールガイド食品成分表 , 実教出版編修部編 , 実教出版 .
⑵ 鈴木昌子 , 最新決定版 食材事典 , 廣田孝子監修 , 長崎有編 , 学研プラス .
⑶ 髙橋秀雄 , からだにおいしい キッチン栄養学 , 宗像伸子監修 , 小元慎吾編 , 高橋書店 .
⑷ 田村正隆 , くらしに役立つ栄養学(第2版) , 新出真理監修 , ナツメ出版企画編 , ナツメ社 .
⑸ 髙橋秀雄 , 正しい知識で健康をつくる あたらしい栄養学 , 吉田企世子監修 , 梅野浩太編 , 高橋書店 .
⑹ 日本スポーツ協会 , アスリートの栄養摂取と食生活 .
⑺ 厚生労働省 , 日本人の食事摂取基準(2020年版) .