妊娠期はママの身体を通じて赤ちゃんにも栄養を届ける大切な期間ですよね。
普段よりも意識して摂取したい栄養素に対し、妊娠中は控えた方が良い食べ物もあります。
そこで赤ちゃんの健康を守るため、妊娠中における基本的な食生活を十分に理解しておきましょう。
この記事では、妊娠中に積極的に摂りたい栄養素や控えた方が良い食材、摂取量に注意したい食材について管理栄養士がご紹介します。
今後、妊娠を希望されている方も是非参考にしてくださいね。
目次
1.積極的に摂りたい栄養素
妊娠中はママと赤ちゃんが健康に過ごせるよう、積極的に摂りたい栄養素を中心とした食生活を心掛けましょう。
そこで、特に意識して摂取したい栄養素を4つご紹介します。
①葉酸
葉酸は赤ちゃんの発育に重要な役割を果たします。妊娠初期に葉酸を十分に摂取することで、赤ちゃんの脳や脊髄の発達異常である神経管閉鎖障害のリスクを減らすことが期待できます。
妊娠前からの摂取が望ましいですが、妊娠が発覚した後でも妊娠初期は推奨量を摂るように心掛けましょう。
ビタミンB群の一種である葉酸は水に溶けやすく熱に弱い栄養素。茹でたり焼いたりせず、蒸したり電子レンジ加熱での調理がおすすめですよ。
葉酸を豊富に含む食材は緑黄色野菜、大豆食品、海藻類などです。主にブロッコリー、ほうれん草、モロヘイヤ、アスパラガス、かぼちゃ、納豆、枝豆、いちご、バナナなどが挙げられます。
もし、つわりで食事が満足に摂れない場合、サプリメント等を活用して葉酸を摂る方法も良いですね。ただ、サプリメントを摂取する際には過剰摂取にならないよう十分に注意しましょう。
②鉄分
妊娠中は赤ちゃんの成長を支えるために母体は鉄分不足に陥りやすく、積極的に補いたい栄養素です。
鉄分が不足してしまうと貧血を引き起こし、早産や出産後の発育などに影響を及ぼす可能性があります。さらに、出産時に血液が多く失われるため貧血は更に悪化し、産後には鬱の要因となります。
そのため、妊娠を考えている方も含めて妊娠前から鉄分を摂る習慣を心掛けましょう。
鉄分を豊富に含む食材は魚介類、海藻類、大豆食品、緑黄色野菜などです。主に赤身の魚、あさり、ひじき、大豆、ほうれん草、小松菜、牛肉、レバーなどが挙げられます。
鉄分は体内に吸収されにくいため、吸収を助けるビタミンCやたんぱく質と一緒に摂取すると良いですよ。
また、貧血と診断された場合、処方される鉄剤の副作用で吐き気や軟便などの症状がみられることがあります。鉄剤を服用すること自体がストレスになる可能性もあるため、食生活において日常的に予防することが好ましいと言えます。
③カルシウム
カルシウムは赤ちゃんの骨や歯などの骨格をつくる栄養素。
不足すると母体の骨から吸収したカルシウムが使われ、ママの骨や歯がもろくなってしまいます。
つまり、赤ちゃんとママの両方が健やかでいるためには妊娠中はもちろん、妊娠前からカルシウムをしっかりと摂取し、骨密度を高めておくことが大切です。
カルシウムを豊富に含む食材は乳製品、小魚類、大豆食品、海藻類などです。主に牛乳、ヨーグルト、チーズ、しらす、じゃこ、豆腐、ひじき、昆布などが挙げられます。
なお、カルシウムの吸収率を高めるビタミンDや骨作りを助けるビタミンKも必要です。これらの栄養素を合わせて摂るように心掛けましょう。
④食物繊維
妊娠中はホルモンバランスの乱れや月齢が進むにつれて大きくなった子宮の圧迫などにより腸の働きが低下し、便秘が起こりやすくなります。
食物繊維は腸の中の老廃物を体外に排出する働きがあり、妊娠中の便秘予防に役立ちます。
食物繊維を豊富に含む食材は海藻類、大豆食品、穀類、野菜、きのこ類、などです。主に昆布、ひじき、枝豆、おから、ごぼう、れんこん、玄米、雑穀米、こんにゃく、キャベツ、レタス、椎茸、エリンギなどが挙げられます。
さらに、水溶性食物繊維は発酵食品と合わせて摂ることで善玉菌が活発に働くため、納豆や味噌、ヨーグルトなどを合わせて摂取すると効果的ですよ。
2.控えた方が良い食材
妊娠中は普段何気なく食べたり飲んだりしているものの中には、胎盤を通して赤ちゃんに届くことで赤ちゃんの成長や発達に影響を及ぼす可能性がある食材があります。
そこで、妊娠中は控えた方がいい食材を4つご紹介します。
①アルコール
妊娠中のアルコール摂取は低出生体重児や発達遅延、中枢神経障害、先天性疾患を発症する可能性が高くなります。
特に妊娠初期はアルコール摂取により自然流産のリスクが上がるため、妊娠が分かった時点で禁酒をしましょう。
ただし、妊娠の時期に関係なく少量のアルコールでも赤ちゃんの健康に影響がある恐れがあるので、授乳が終わるまではアルコールの摂取を控えましょう。
②食中毒を引き起こしやすい食材
食中毒による激しい嘔吐や下痢の症状によって子宮収縮の原因となることがあり、早産や流産などを引き起こす可能性があります。
特に牡蠣など生の二枚貝に多いノロウイルス菌、生魚から感染する腸炎ビブリオ菌、生の鶏肉や卵の殻などから感染するサルモネラ菌など、食中毒の危険性がある生の食べ物は控えましょう。
③トキソプラズマを含んでいる可能性のある食材
トキソプラズマは加熱不十分の鶏や豚、牛肉などに寄生している可能性があります。
もしも、トキソプラズマに感染してしまうと胎盤を通して赤ちゃんも感染し、先天性トキソプラズマ症を発症することがあります。
先天性トキソプラズマ症は、未熟児、子宮内胎児発育不全、黄疸、肝脾腫、心筋炎、肺炎などを引き起こす恐れもあります。
妊娠中は生の肉類を避け、十分に加熱して食べるようにしましょう。
④リステリア菌を含んでいる可能性のある食材
リステリア菌とは食中毒を引き起こす原因となる細菌の一種。
特に加熱殺菌していないナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモン、肉や魚のパテなどの乳製品や食肉加工品などから検出されることがあります。
また、リステリア菌は塩分や冷蔵に強いため、冷蔵庫内でも増殖する細菌です。冷蔵庫を過信しすぎずに消費期限を守りましょう。
妊娠中は健康な成人と比べるとリステリア症を発症しやすく、子宮内胎児死亡や出生直後の新生児死亡などの原因になるため、妊娠中はリステリア菌を含んでいる可能性のある食材は控えましょう。
3.摂取量に注意したい食材
妊娠中は意識して摂りたい栄養素が多くありますが、中には摂取量に気をつけなければならない食べ物があります。
そこで、摂取量に注意したい食材を5つご紹介します。
①塩分
妊娠中は体の血液量も増えるため、高血圧を引き起こしやすい時期です。
また、塩分の摂取量が多いと妊娠高血圧症候群を発症する恐れがあります。予防するためにも日頃から減塩を心掛けましょう。
塩分を控えるため、以下のようなポイントがあります。
・昆布、かつお節、きのこ類などの出汁を活かす
・醤油などの調味料はかけるのではなくつける
・香味野菜、香辛料、酸味、かんきつ類などを活用する
・汁物は具沢山にし、麺類のスープは飲み干さない
・カリウムや食物繊維を豊富に含む食材と合わせて摂取をする
さらに、それぞれの料理に合った温度で食事をすることで、塩分が少なくても美味しくいただくことができますよ。
②カフェイン
コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインを多く摂り過ぎてしまうと、妊娠高血圧症候群や自然流産のリスクが高まり、赤ちゃんの発育を妨げてしまう可能性もあります。
世界保健機構(WHO)では、妊婦が1日に摂取するカフェインの量は2カップ程度に抑えるようガイドラインが定められています。
そのため、日常的にカフェインを含む飲み物を飲んでいる方は摂取量を減らし、ノンカフェインやカフェインレスの飲み物で代用すると良いでしょう。
他にも、チョコレート、緑茶、コーラ、栄養ドリンク等にもカフェインは多く含まれているので、摂取量を制限するように意識しましょう。
③メチル水銀
メチル水銀を多く含む魚を過剰に摂取してしまうと、赤ちゃんの中枢神経の発達に影響を及ぼす恐れがあります。
主にマグロ、カジキ、金目鯛などの大型な魚類にメチル水銀が多く含まれており、特に妊娠初期の摂取量には注意が必要です。
魚類は妊娠中に必要な栄養素も豊富なため、適切な量を摂るように心掛けましょう。
④動物性ビタミンA
動物性ビタミンA(レチノール)は妊娠初期に過剰摂取すると、赤ちゃんの形態異常を引き起こすリスクが高まります。
主にレバー、うなぎ、あなご、鶏卵などに動物性ビタミンAが多く含まれており、特に妊娠初期の摂取量には注意が必要です。
緑黄色野菜などに豊富に含まれる β‐カロテンは、身体に必要な分だけが植物性ビタミンA変化するため、積極的に摂り入れるようにしましょう。
⑤ヨウ素
ヨウ素は甲状腺ホルモンの主原料となる必要不可欠な栄養素ですが、過剰に摂取すると赤ちゃんの甲状腺機能が低下してしまいます。
特に昆布やワカメなどの海藻類に多く含まれており、習慣的に摂取をしない限りは摂取推奨量を大幅に超えるような食材ではありません。ただ、摂取可能な量を把握した上で日頃の食事にヨウ素を摂り入れましょう。
そこで、塩昆布や酢昆布などの間食、昆布の佃煮やお吸物などを習慣的に摂らないように注意が必要です。また、ヨウ素系のうがい薬にも気をつけましょう。
4.まとめ
以上、妊娠中に積極的に摂りたい栄養素や控えた方が良い食材、摂取量に注意したい食材について解説しました。
赤ちゃんとママの健康を守るため、以下の点に注意しましょう。
⑴ 葉酸、鉄分、カルシウム、食物繊維を積極的に摂取する
⑵ アルコールや食中毒を引き起こしやすい食材は控える
⑶ トキソプラズマやリステリア菌を含んでいる可能性のある食材は控える
⑷ 塩分、カフェイン、メチル水銀、動物性ビタミンA、ヨウ素の摂取量に注意する
⑸ ビタミンAは緑黄色野菜などに豊富に含まれる β‐カロテンから摂る
是非、ご紹介した内容を取り入れて妊活・妊娠中の食生活にお役立てくださいね。
当記事が参考となり、1人でも多くの方の健康増進に携われたら幸いです♪
《参考文献》
⑴ 戸塚雄弐 , オールガイド食品成分表 , 実教出版編修部編 , 実教出版 .
⑵ 鈴木昌子 , 最新決定版 食材事典 , 廣田孝子監修 , 長崎有編 , 学研プラス .
⑶ 髙橋秀雄 , からだにおいしい キッチン栄養学 , 宗像伸子監修 , 小元慎吾編 , 高橋書店 .
⑷ 田村正隆 , くらしに役立つ栄養学(第2版) , 新出真理監修 , ナツメ出版企画編 , ナツメ社 .
⑸ 牧野直子 , 赤ちゃんが元気に育つ 時期別妊娠中のおいしい食事280品 , 川名有紀子監修 , 学研プラス .